第2章:再現性の設計
この章では、「再現性のある価値提供」をどのように設計するか、その具体的な思考技術とプロセスを扱います。
構造化によって再現性を確立するとは、**“成果を出せる型”を見抜き、再設計し、使いこなす力”**に他なりません。
構造化とは、再現性を獲得するための知的操作である。
そしてそのためには、
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何を再現するか(本質の抽出)
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なぜ再現するか(目的・文脈の理解)
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どう再現するか(構造の設計)
が必要になります。
■ 2.1 再現性とは何か?
再現性とは、誰がやっても、どこでやっても、一定の成果が出る状態のことです。
つまり「再現性のある施策」とは、「一度きりではなく、繰り返し使える勝ちパターン」。
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たまたま売れた → 再現性なし
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なぜ売れたのかを分解できる → 再現性の始まり
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他の商品にも応用できた → 再現性の確立
再現性のある商品企画・マーケティング・ブランド表現があれば、個人のセンスや運任せから脱却できます。
STEP0|目的の明確化(=指向性の定義)
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問い:なぜ構造化するのか?何を達成したいのか?
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視座:誰の視点で?誰にとっての意味か?
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出力像:どういう形で再現されるべきか?(動画?Asanaプロジェクト?フローチャート?)
STEP1|現象を観察する(成功・失敗を問わず)
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ヒットした商品や企画、うまくいかなかった施策を記録する
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表層的な事象ではなく、「なぜそうなったか」を深掘る
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定量データ+定性データの両面から見る
例:
「売れた」→ なぜ? → ターゲットの感情に刺さった?時期?価格?バンドル?
STEP2|要素を抽出し、構造を見抜く
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どんな要素が因果に関わっていたかを洗い出す(=点の抽出)
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その要素同士の関係性を見出す(=線の把握)
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繰り返し現れるパターンを言語化する(=型の発見)
例:
・50代女性向けの商品は「手間がかからない」「香りが良い」ことが刺さる
→ これは“感覚的快適さ×時間短縮”という価値構造である
STEP3|再構築してテンプレート化する
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成功の構造を再定義し、他の商品にも使える形に落とし込む
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「コンセプト設計テンプレート」や「打ち手リスト」に昇華させる
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チームで共有可能なナレッジに変換する
例:
商品企画フレーム
「①誰に」「②どんな生活文脈で」「③どんな感情を引き出すか」「④そのために何を提供するか」
■ 2.3 再現性を最大化する思考技術
● 抽象化と具体化の往復
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再現性とは「抽象化した原則を、別の具体に応用する力」
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具体で終わると再現性はない。抽象で止まると実行性がない
「泡立ちが良くて売れた」→具体
「手軽さと気持ちよさが同時に得られる商品が受ける」→抽象
→ 次の商品でも「手軽×気持ちよさ」の構造で設計する → 再現
●「型」を壊せるのは、「型」を理解した人だけ
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型化は思考の強力な補助輪
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ただし、すべてを型に落とすと独自性を失う
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「再現性の限界」を感じたら、そこから逸脱する非再現性設計へ
■ 2.4 ブランドマネージャーが持つべき問い
構造化による再現性設計を進めるには、問いを持つことが不可欠です。
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なぜ売れたのか?(要素と関係性)
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なぜ売れなかったのか?(構造上のボトルネック)
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他の領域に応用できるか?(抽象化可能性)
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この構造は誰にでも再現できるか?(属人性の排除)
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この構造は競合に真似されやすいか?(模倣可能性)
■ 2.5 再現性は“武器”である
再現性のある構造を持つことは、組織にとっての「知的武器」です。
一人のセンスや感覚に頼らず、誰でも成果に近づける状態を作れる。
その武器を磨くために必要なのが、構造化の技術なのです。
次章では、構造化を使って競合への模倣・迎撃・上回る手法を探っていきます。
再現性の技術を「競争戦略」にまで高めていくプロセスです。