再生産性という価値基準
生産性/再生産性という価値基準を、チームに実装するために
はじめに
どれだけ頑張っても、また同じような課題が現れる。
気づけば“対処”ばかりしていて、未来のための時間がまったく取れない。
そんな感覚を抱えながらも、日々の業務に忙殺されているマネージャーは少なくありません。
むしろ、そういった状況に身を置いている人ほど「チームにとって欠かせない存在」であり、「目の前のことを最優先せざるを得ない」状況にあるのだと思います。
私たちは、そんな人たちの努力を否定するのではなく、むしろ**“その延長線上に、もう一つの視点を重ねる”**ことを提案したいのです。
働き方を定義し直す:生産性と再生産性
■ 生産性とは?
「アクションによって、なんらかの成果(変化)を生み出す効率性」
たとえば:
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お客様からの問い合わせにすぐ答える
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クレームを収束させる
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スケジュール通りに納品する
これらは、いずれも生産的です。価値を生んでいますし、必要不可欠な仕事です。
■ 再生産性とは?
「一つのアクションによって、持続的・波及的に価値が生まれる構造をつくる力」
たとえば:
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よくある質問をナレッジ化して問い合わせを減らす
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クレームの原因を構造化して再発防止策を設計する
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スケジュール進行をテンプレート化して他のメンバーも使えるようにする
ここで価値が生まれるのは、“今”だけではなく、“その後”にも波及するという点にあります。
定義のない組織で起きること
もし「これは生産的な仕事か?再生産的な仕事か?」という視点がなければ、組織は次のような状態に陥りやすくなります:
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緊急な仕事ばかりが評価される
→ 応急処置が続き、同じ課題が繰り返される -
“忙しさ”が成果のように扱われる
→ 本質的な改善や仕組みづくりの時間が奪われる -
人に依存した現場が続く
→ 属人化が進み、引き継ぎも成長も起こりにくい -
短期的なKPIに追われて、本来の価値からズレる
→ チームの「やってる感」はあるが、蓄積される力が乏しい
この状態は、決して個々人の怠慢ではなく、“構造に定義がない”ことによって起きているのです。
次世代のチームへ:新しい価値基準を実装する
これからのチームに必要なのは、
「成果を出すこと」+「成果が自走する構造をつくること」
この2つを両立する、柔軟で賢明なチーム運営です。
そのためには、明確な価値基準が必要です。
🔸 判断基準のシンプルな問い
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これは生産的か?再生産的か?
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この仕事は、誰かの負担を軽くし続けるか?
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この成果は、時間が経っても意味があるか?
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他の誰かが再現可能な構造になっているか?
この問いを、チームのあらゆる判断に組み込むことが「生産性改革=働き方改革」そのものです。
本当のリーダーとは?
多くのマネージャーは、過去の問題を片づけるために今日も忙しい。
けれど、本当のリーダーは“描きたい未来を実現するために、今この時間に投資”します。
再生産性は、すぐに成果が出るとは限りません。
むしろ、最初は「なんでこんなことに時間を使うの?」とさえ言われるかもしれません。
でも、それが次第に形になって、誰かの負担を減らし、仕事を回し、
未来のチームを支える“目に見えないインフラ”になる。
私たちは、その静かな取り組みこそを“真の生産性”として評価するチームを目指します。
この考え方は、単なる「働き方の改善」ではなく、
“チームとしての在り方を定義し直す”ための基準です。
現場での即応性と、未来への仕組みづくり。
その両輪が揃ったとき、チームは初めて「成果を回す」存在へと進化していきます。
どうかそれぞれのタイミングで、この価値基準を思い出し、
次の一手に活かしていただければ幸いです。
生産性/再生産性をチームに実装する
このコンテンツは、チームが「生産性/再生産性」という価値基準を理解し、日々の業務や働き方に組み込んでいくための実践的ワークショップ設計です。
目的は「忙しいを超えて、価値が回るチーム」へと進化する第一歩を踏み出すこと。
短期成果ではなく、継続可能な力をつくる働き方を、みんなで考え、試していくための手引きです。
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ステップ0
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ステップ1:価値基準の理解(生産性と再生産性)
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ステップ2:業務棚卸し(業務の見える化)
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ステップ3:業務の再分類(生産/再生産のマッピング)
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ステップ4:観察と問い直し(なぜ再生産できていないのか?)
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ステップ5:再構築案の共有と対話
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ステップ6:アクション設計(まずは一歩だけ進める)
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おわりに(定着とリーダーシップの在り方)
1. ステップ0
忙しい日々の中で、私たちはつい「目の前の仕事を片づける」ことに意識を集中してしまいます。
ですが、ふと立ち止まったときに、こんな風に感じることはありませんか?
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「また同じ問題が起きている」
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「誰かが辞めたら業務が回らない」
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「忙しい割に、チームが前に進んでいない気がする」
このワークショップは、それらの根本原因に静かに目を向け、
“価値が回る働き方”への一歩を見出す時間です。
2. ステップ1:価値基準の理解(生産性と再生産性)
● 生産性とは
「アクションによって、なんらかの成果(変化)を生み出す効率」
例:
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クレーム対応を行う
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注文処理を行う
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問い合わせに回答する
これらは、必要で重要な仕事です。
● 再生産性とは
「一度のアクションで、持続的・波及的に価値が生まれる構造をつくる力」
例:
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クレーム対応マニュアルを作成し、次回の対応負荷を軽減
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よくある問い合わせをFAQ化し、自己解決率を高める
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教育資料をつくり、次の新人が同じ教育を受けられるようにする
3. ステップ2:業務棚卸し(業務の見える化)
● ワーク内容
各メンバーが、過去1週間〜1ヶ月の業務を振り返り、以下の項目を書き出します。

※GoogleスプレッドシートやホワイトボードでもOK
Asanaでタスク管理を行なっていればエクスポートですぐに終わります。
4. ステップ3:業務の再分類(生産/再生産のマッピング)
● 判断の問い
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この仕事は、一度きりの成果か?継続して価値を生むか?
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再発防止や仕組み化の余地はあるか?
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他のメンバーでも再現可能な設計になっているか?
● マトリクス(口頭でもOK)

マトリクスに当てはめるだけで、「忙しさの正体」が可視化されます。
5. ステップ4:観察と問い直し(なぜ再生産できていないのか?)
● グループまたは個人で内省
問い例:
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なぜ、再生産化されていないのか?
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本当は仕組みにしたいけれど、できない理由は?
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時間か?ナレッジか?承認プロセスか?
ここでは「反省」ではなく、「構造的な観察」が重要です。
“怠慢ではなく、構造的に仕組み化できていない”という気づきを得る場にします。
6. ステップ5:再構築案の共有と対話
● グループで共有・アイディエーション
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各自が「再生産的にしたい業務」を1つ選ぶ
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それをどう変えられるか、ブレインストーミング
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他メンバーからの協力やヒントを募る
※「これ、うちも困ってた!」という共通課題が見つかることもあります。
7. ステップ6:アクション設計(まずは一歩だけ進める)
● 宣言テンプレート

「一気に変えない」「まずは1つだけ」がポイントです。
実行可能性のある“小さな再生産”が次の流れを生みます。
8. おわりに
この時間で考えたことが、今日からすぐに大きく成果を変えるわけではありません。
でも、誰かがその一歩を踏み出したとき、きっとチームに変化が起きます。
私たちは、**「目の前の仕事をこなす人」から、「価値が続く仕事をつくる人」**へ。
それを支えるのが、今回のワークの目的です。
無理せず、自分のタイミングで。「再生産的に働く」という選択肢があることを、ぜひ忘れないでください。