MCCの構造について
スキル定義について
MCCは2つの大分類と、9つの中分類で構成されており、スキルや思考の幅広さをカバーしています。すべての能力を5段階で定義し、成長段階を言語化できるようにしています。
戦略的スキルは、組織を運営していく上で不可欠な能力を定義しており、マネージャー層以上では必須の能力を定義しています。これはMCC以外の他の職種のキャリアコンパスでも共通のスキルとなります。重要なスキルのため加点要素は施策的スキルの2倍です。
施策的スキルは、職種に応じた専門性の高いスキルを6つのカテゴリーに分解し、さらにそれを5つに小分類に分解した合計30のスキルから構成されています。
5段階の能力評価方法について
能力評価は5段階で行われ、全くの初心者から、他者を育成できるレベルの専門家になるまでを定義しています。
スコアレベル定義と心理的安全性の確保について
能力評価制度では、スコアによるレベル定義が明確に設けられていますが、スコアが数値で示されることで、自己価値の否定や不安を感じてしまう人も少なくありません。スコア定義の本来の意味と、評価を心理的安全性のある成長対話に変えるための考え方を整理します。
■ スコアの誤解と向き合う
❌ 「2だった…まだ全然できてない」→ 誤解です
スコア2は、「できていない」ではなく「部分的に理解・実行し始めている」という意味です。実際、2→3の成長には“意識的な挑戦”が必要なため、極めて重要な移行段階です。
❌ 「3じゃないと信頼されない」→ 誤解です
スコア3は確かに「プロとしての自走レベル」ですが、すべてのスキルで3以上である必要はありません。専門性の深度や職務内容に応じて、2で十分な領域もあります。
❌ 「5じゃないと出世できない」→ 誤解です
5は「指導・体系化」の水準であり、職位や役割と必ずしも一致するものではありません。逆に、5を軽く取らせることで制度全体の信頼が損なわれることもあります。
■ 心理的安全性を確保する運用ポイント
1. スコアは“今の位置”であり“未来の制限”ではない
スコアは「現在の見え方」であり、「これ以上伸びない」という評価ではありません。「今ここにいることが見えた」こと自体が、成長の第一歩です。
2. 成長曲線は人それぞれである
評価の目的は“他人との比較”ではなく、“自分自身の現在地を見つけ、次のステップを明確にすること”です。周囲と同じスピードで進まなければならない理由はありません。
3. 点数ではなく“言語化された行動”にこそ意味がある
本制度の本質は、「行動・成果の言語化と構造化」です。スコアが一時的に低くても、記述された行動が本質的であれば、フィードバックと成長の材料になります。
4. 評価は“問いかけ”である
スコアは断定ではなく、「あなたは今、ここにいるように見えます。あなたはどう思いますか?」という問いです。すり合わせこそが信頼と自己認識を育てる起点になります。
評価制度は、“良し悪しをジャッジする装置”ではなく、“可能性の現在地を知るための鏡”です。 スコアはその鏡に映った一時的な姿であり、そこから何をどう積み重ねていくかを考えるための出発点です。
スコアを受け入れるとは、自分を否定することではなく、自分の可能性と向き合うこと。そうした対話を制度の中に根づかせることこそ、真に意味ある評価制度の役割です。
テンプレートの使い方
Step 1. 基本情報の記入
記入日、名前、現在の等級、を初めに記入し、次回目指すべき等級も入力してください。
Step 2. 自己評価の記入
自己評価を5段階評価の評価軸を参考に記入してください。各スキルに応じた評価の定義は、「小分類測定段階の定義」のシートに記載されています。
Step 3. 具体的な実績・行動を記入
自己評価に基づき、具体的な実績、行動、成果を詳細に書き出し、必要であれば実績を証明する資料を作成してリンクしてください。
このステップは非常に重要です。これがないと、自己評価は「感覚ベース」「自己イメージ」になりがちで、上長との認識のズレを助長する温床にもなりかねません。書くプロセス自体が、自分の強みや成長ポイントを言語化する訓練になります。
Step 4. レビューし上長評価の記入
上長は自己評価、具体的な実績に基づき、上長評価を入力します。
Step 5. 面談を行い合意評価を決定する
ギャップを確認しつつ、最終的に両者で合意した合意評価を決定入力します。点数がグラフに反映され能力値が数値化されます。
評価プロセスのステップ
MCCでは、自己評価→上長評価→合意ステップの順に進めます。これは単に点数をつけるだけでなく、対話を通じて納得と成長につなげるプロセスです。
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自己評価の記入
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自分のスキルレベルを自覚し、言語化する
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自己認識のギャップを知るきっかけになる
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上長評価の記入
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客観的な視点で行動と能力を判断
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評価の根拠をコメントで補足
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合意評価(すり合わせ)
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ギャップがあれば、理由と背景を対話
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評価のすり合わせよりも「納得と成長」が目的
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次のアクションを明文化することで成長につなげる
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運用上の注意点
制度を正しく運用するには、数字だけにとらわれず、コメントや文脈を丁寧に扱うことが大切です。MCCはあくまで“成長の道しるべ”であることを忘れずに使いましょう。
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スコアの一致を目的にしない
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大切なのは評価の“差異”ではなく“対話”
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数値だけで判断しない
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コメントや実績エピソードを必ず見る
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評価はあくまで「成長のきっかけ」
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罰ではなく、未来へのヒントとして活用する
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短期評価で一喜一憂しない
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長期的なキャリア成長を支援する仕組みであることを前提に
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まとめ
MCCは、評価のための制度ではなく、成長の可視化と組織の共通言語をつくるためのフレームワークです。育成と信頼の文化を育てるために、ぜひこの仕組みを活用していきましょう。
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MCCは「育成」と「組織の一貫性」を両立する新しい評価ツール
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目的は“序列”ではなく“成長の方向を共有すること”
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成果だけでは見えない「価値ある能力」を可視化しよう
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チームで信頼しあい、学び合う土壌を育てるために、MCCを使いこなしていきましょう